読んだ本
本書は会計に関して、エピソードを交え歴史的な経緯を追うようにして書かれた作品です。一通り読み終えたので、記憶の定着をもく定期として記述します。記憶を辿りながら記述するため記載には誤りがある可能性があります。気づかれましたらご指摘ください。
財務会計・管理会計・ファイナンス
財務会計
ストレンジステークホルダー(外部の株式取得者)に対する報告のための会計。バランスシートや損益計算書およびキャッシュフローシートを作成する。よくIRで見る。 1500年頃のイタリアでは自身の儲けの計算のために帳簿が付けられていたが、外部に公開し、外部が会社の財務的健全性をみるという点でその頃の会計とは異なる。
管理会計
外部の説明ではなく、自社内で自社の状態を把握するために使用する。デュポンによる事業部制および 利益=利益率 * 回転率
の公式に当て嵌め、各事業部の収益性を把握するためなどに使用する。
ファイナンス
20世紀後半以降 情報・人などB/Sに載らない資産が増えてきたことに伴い会社の価値把握をB/S, P/L, CFから判断するのは難しくなった。しかし M&Aの際などには会社の価値を把握する必要がある。この際に会社の将来キャッシュフロー
の各年の割引率をかけて現在価値を算出する方法が生まれた。これをコーポレートファイナンスという。
ファイナンスは将来価値から現在価値を算出するが、将来価値を高めるためにどのようなB/S, P/L, CFが良いかなどの今までに無かった観点が入る。したがってファイナンスの登場により、従来の財務会計にも影響がでた。減価償却費の減損扱いや、のれんの減損など。
なお、のれんは会社の取得価格と買収会社資産の差分に対応した仕訳だが、これはB/Sに計上される資産と情報・人材などB/S上に表現されない資産の差分に対応する。
B/S上の右下
物語の中でエジソンなどの偉人と彼らの起業した会社に関しての記載がでてくるが、B/Sの資本(株式)を握られたことで会社を追われている。資本主義においては会社は資本を握った人のものであり、資本の原理にのっとるとそうなる。
会計の論点
基準による利益の違い
どの会計基準を用いるかで最終的に計上される利益が大きく異なる。日本は日本GAAP、 US GAAP、IFARSが混在しているらしい。国際会計基準はIFARS(International Finance Accounting Reporting Standard)。アクチュアリーの勉強の際に見た気がする。
関係性
歴史
- 16c イタリアに簿記が登場(ダヴィンチの頃) - この頃は自身の収益把握がメイン
- 18c オランダ東インド会社が株式公開をし第三者に販売するに当たって説明責任が発生し財務会計がおこる
- 20c アメリカで会社規模の拡大にともないデュポン公式に立脚した事業部制が誕生。それぞれの事業部の収益把握のために管理会計がおこる。
- 情報、人などB/S上に記載されない価値が占める割合が増える。M&Aなどのために会社の価値算出を行う必要がありファイナンスが誕生する。
- 過去に対する財務会計 -> 現在に対する管理会計 -> 未来に対するファイナンス
感想
得てすると数字の羅列として見えてしまい無味乾燥になりがちな会計という分野を歴史的なエピソードを交え大変楽しく学べる良著でした。内容もさることながら調査範囲の膨大さには目をみはる物がありました。巻末の参考文献を見ると、それだけで本書全体のページ数の5%にあたりました(kindleの表示を参照)。
これだけの膨大な内容を物語形式でまとめるのは並大抵のことではないと思います。大変楽しい時間を過ごすことができました。著者の田中靖浩氏に感謝します。