読んだ本
Creative Selection Apple 創造を生む力
- 作者: ケン・コシエンダ,二木夢子
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2019/03/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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なぜ読んだか
私はiOSアプリエンジニアとして3年半ほど企業で勤めてきました。 日々アプリ開発を行う中で開発ドキュメントやWWDC動画を通じてヒントを得たり、 開発中にiPhoneやiPadの実機を使用することもありAppleという企業に対して強い親しみがあります。 プライベートでもiPhoneを使用しており、Appleのプロダクトがどのような思想や組織文化によって作られているのか興味があり本書を読みました。
印象に残った内容
7つの要素
Appleでは以下の7つの要素を重視している。
- インスピレーション - 広い視野をもって発想し、様々な可能性を考える
- コラボレーション - 他者と協力し、互いの強みを活かし補完し合う
- テクニック - スキルを使って質の高い結果を得る。そして、常によりよい仕事ができるように励む
- 勤勉さ - つまらない仕事でも、必要なら手抜きや妥協をせずにやり抜く
- 決断力 - 難しい選択を、遅れたり、引き延ばしたりせずに行う
- テイスト - 見る目を養い、「魅力的でありながらまとまりのあるもの」をつくるバランスを見つける
- 共感力 - 他者の視点から世界を見、彼らの生活とニーズに適応するものをつくる。
Creative Selection
デモが開発プロセスの中心にある。明確かつ具体的なデモを行い、フィードバックに基づいて次にやるべきことを絞り込み、新たなデモを行い着実に前に進む、このことを「クリエイティブ・セレクション」と読んでいる。Appleのクリエイティブなプロダクトはひらめきによって一瞬で生む出されるものではなく、デモを中心とした「選択の繰り返し」によって完成するものである。このような進化論に基づく品種改良のようによりよい物を繰り返し選びとって改善を続けるプロセスがアップルの想像力の本質「クリエイティブ・セレクション」である。
ヒューリスティクス(経験則)とアルゴリズムのバランスをとる
Appleでは数値だけではなく、経験則を重視している。言い換えると、ヒューリスティクスとアルゴリズムの「交差点」の仕事をしている。 何らかの決定をする際に、ユーザーがより使いやすいプロダクトにするためにデータと数値だけではなく、「五感」に訴える発想 が求められた。例えば、アプリアイコンのサイズ、アプリアイコンのタップからアプリが全面に表示されるまでのアニメーション時間などはチーム内で使用する中で経験則的に導かれた。
シンプルイズム
シンプルイズムはプロダクトデザインでも説明の際にもアップルのあらゆる場面で上位概念とされた考え方の一つである。ただでさえ忙しいユーザーにソフトウェアが原因で過負荷にならず、ユーザーから学びやすく、長い目でみて使いやすいプロダクトになるためにはシンプルにする必要がある。そのため、重要でない機能はカットし、ユーザーが考えなくても使えるようにする。プロダクトを開発していて難しい疑問が発生するようなら、その答えを探すのではなく、「どうしたらその疑問そのものをなくせるだろうか」と考える。
実用的な発明、製品づくりに関する基本的な概念
「デザインとは、どう機能するかだ」
感想など
なんとなくAppleに抱いていたイメージとあっているなというのが本書を読んだ最初の感想です。 細部のディテールにまで妥協しない製品開発への姿勢、ユーザー志向によるシンプルさの追求といった要素が、クリエイティブなAppleのプロダクトに結びついていることを理解しました。個人的に印象に残っているのが、デザインに対するAppleの考え方とデモを中心としたプロダクト開発プロセスです。
デザインに関しては、ともすれば綺麗なUI、綺麗なアニメーションにこだわりがちですが、「どう機能するか」を重視し、ユーザーからみてシンプルなUXを提供できることを追求する姿勢をもって業務に励んでいこうと思いました。
プロダクト開発プロセスにおいては、なにを目的としたデモなのかを明確にし具体的に表せることの重要性を学びました。 目的をシンプルに表現することによって、どこに注目すれば良いかが明確になり、具体的なデモであることでフィードバックが的確になります。結果として、次の改善点も明確になり、その繰り返しによって、より良いプロダクトの開発につながっていきます。
本書を読むことで普段使用しているiPhoneなどのAppleのプロダクトがどのような思想やプロセスで作成されているのか理解することができました。また、デザインに関する考え方や明確で具体的なデモを行うなど自身の業務においても活用できる点が多々ありました。 今後の自身の仕事にも活かしていきたいと思います。
備考
本書の中にiPhoneの時計の時間に関する小話がのっていました。 広告などにのっているiPhoneの時計の時間は「9:41」となっているそうです。 なぜかというと、iPhoneの発表された時刻が9:41であり、製品の時刻は発表と同じ時刻か、少なくともそれに近くなければいけないという発想により、この時刻を使用するのが伝統になっているからだそうです。実際にAppleの公式ストアのiPhoneの時計の時刻を見たら「9:41」となっており、ちょっとした感動を味わいました。
また、アップルの基調講演は、開始後40分くらいでヤマ場の製品紹介に入るように計画されているらしいです。 今年のWWDCも来月に迫ってきていますが、どのような発表がされるのか今からとても楽しみですね。